第16章 恥ずかしさともどかしさの狭間
翌日のオフも何とかやり過ごしたものの、決勝の日、どう頑張っても隠し切れなかった雅。
「…どうしたらいいのよ…もぉ…」
ジャケットのジップを一番上まで開けてもうっすらと覗くその痕に手を焼いていた。
「…でも…ほんと行かないと…」
集合時間ギリギリになった雅。どうしようもなくなっていた。
「…おはようございます」
「おはよう、珍しくおそか…ハァ…たな」
「すみません…」
「いや、いい…あすか」
「何?兄さん」
「スカーフ、まだあったろ」
「あるけど…何するの?」
そっと伝えられ、それなら…と取りに戻る前にあすかは首元から外した。
「…雅ちゃん」
「はい、?」
「クスクス…コレ」
「え…っと…」
「兄さんから。私のだけど」
「……ッッ…」
ふわりと首元を覆い、襟にかぶせる様にしていい具合に巻いてくれたあすかに雅は顔を真っ赤にしていた。
「…これで良し」
「ごめんね?あすかちゃん…」
「大丈夫よ☆」
嬉しそうにあすかも雅にスカーフを貸していた。そうしてサーキット場に向かうスゴウチーム。
これが終わったら少しの間中休みの長期休暇が入る。もうひと踏ん張りだ!と言わんばかりにポイントを狙うドライバーは多く居た。
ガレージに着けば雅の顔も変わり、他の事は目に入らなくなる。とはいえ、やはり狙ったかの様にガレージはAOIZIPと隣り合わせ。
「…ッッ」
ガレージから少し外に出た時だった。
「…なぁにしてんの」
「え?」
「…よ、おはよ」
「…おはよう…ございます…ッ」
それだけの会話をしただけなのに…雅の顔は紅潮していた。
「…さすがに言われたか」
クスクスと加賀は笑って隣のガレージに入っていくのだった。