第10章 毒夢
死んだと聞いた時は過呼吸になる程泣いた。
たくさん泣いた。これでもかというくらい泣いた。
死因は頭部の強打、失血死だった。お腹にいた赤ちゃんも死亡が確認された。母が空手をしていたのになぜ殺されたのか。お腹の赤ちゃんを守るため激しい技が出せなかっからだ。それに男は刃物をたくさん持っていた。
侵入してきた男は母と父を殺した後、逃走。警察が行方を追って見つけた時には、男は喉を切って死んでいた。
警察に捕まり、刑務所に入れられるくらいなら死んで逃げようと思ったのだろう。だから何が目的か、動機は何だったのか、何も言わずに男は死んだ。
わたし達とは一切面識のない人物だったため、捜査は難航。打ち切りとなった。
ふざけるな‥!
母と父、そしてまだ妹か弟かわからないがわたしの大事なを家族になる子を殺した上に死に逃げするなんて!!
いくら恨んだって男はもういない。いくら願ったって家族はもう戻ってこない。
なら、自分は家族の分まで生き、強くなる。これから私と関わる人達が危ない目にあっても、守れるように。
罪を犯した人間が、死んで逃げないように‥‥!
風邪を引いた時は毎回と言ってもいい頻度であの日の事が夢に出てくる。その度に私は涙が出るが、強くなろうと、家族にあの世で会った時に胸を張れるように生きようと思う。
事件から数ヶ月、祖父に引き取られ私は空手を教えて欲しいとお願いした。
母は生前、空手教室を開いていた。私ももう少し大きくなったら習うはずだった。
祖父も空手の黒帯持ちであり、師範をしているため教えてもらうなら、この人しかないと思った。
「強くなりたい‥自分の心も体も。これから関わる人だけでも守れるようになりたい‥!危害を加えた奴が逃げれないようにもなりたい!」
私の意志は祖父に届き、教わるようになった。
今でも聞こえる。殴られてる音、刺されてる音が。
でも、母と父の笑顔、私の名前を呼ぶ声、幸せだった日常も忘れない。
ママ、パパ、お腹にいた妹か弟へ
見ていてくれていますか?会ってたくさん話したいけど、まだそっちにはいけないです。でも、最高だったと言える人生にするからね!