第7章 戦の前
-数日前、春日山城
「ああ、つまらん。早く戦がしたい」
「落ち着け、謙信。あいつらが帰ってくるまで待て」
酒を酌み交わしながら謙信と信玄はそれぞれ家臣である佐助、幸村を待っていた。
「戦ほど生きた心地のする場などない。もういっそ始めるか」
「お前のその戦好きは病気だな。女の子と一緒にいる方がずっと楽しいぞ」
「女好きも重症だな、信玄。その性根、叩き直してやる」
謙信が刀の鞘の手をかけた時、襖が開いた。
「ストップです。謙信様。刀を収めてください」
「ふん。お前達の帰りが遅いから待ちくたびれたぞ」
「それは義元に言ってくださいよ。こいつ、すーぐどっか行くから大変だったんですよ」
続いて幸村、義元が広間に入ってきた。
佐助と幸村が仕えているには上杉・武田の元だった。
「おかえり、幸、佐助、義元」
「ただいま、信玄。安土は良いところだったよ。たくさん良い物が見れたし、手に入った」
「だーれが荷物持ってやったと思ってんだ」
「俺も少しは持ったよ」
「ほんの少しだろーが!」
「まあまあ落ち着け。義元はボンボンなんだ。大目に見てやってくれ」
今にも爆発しそうな幸村を信玄が宥めている様子に、義元は親子だなと思った。
「佐助、幸村、偵察ご苦労。報告を」
一瞬にしてさっきまでの和やかな雰囲気とは打って変わり、張り詰めた空気になった。
「織田の方は謙信様、信玄様が生きていることに気づき、戦に備えていました。後もう一つ、本能寺で信長を襲ったのは顕如だということがわかりました」
「‥あの坊主も信長の首を狙っているのか。邪魔立ては許さん。織田の支城を攻める」
「佐助の報告は三ツ者の情報と同じだ。‥言っても聞かないんだな、謙信。時も惜しい、支度をするか」
二人の大将の即決により、春日山城内は物々しい空気となったが、義元は静観していた。安土にいる二人の姫の安否を案じていながら‥
その晩、士気を高めるために宴が開かれ、より一層団結力は強固となった。