第3章 安土城
「これが、安土城‥」
大きい。そう、とにかく大きく、権威を象徴するような城だ。
「これから、信長様の御前に行く。失礼のないように」
「(そうだ。ここからが、本番‥‥一体、何を言われるのやら)」
「おい、聞いているのか?」
「あ、はい。がんばります」
「ったく。逆に心配になってきた‥」
秀吉さんの心配?をよそに、私はこれからこの時代で二人でどうやって生き延びるか思考を巡らせるのだった。
城に着いて、さっそく大広間に案内され、突拍子もない命令を出された。
「今後、貴様らはこの城に住み俺に仕えろ」
「(俺に仕えろって‥何もできないのに‥)」
心の中で反論していると、琴葉が肩身狭そうに言った。
「あの、私達じゃ、何にもお役に立てることはできないと思います‥武器が扱えるわけでもないですし、」
「何を言う。貴様ら、昨夜賊に対して素手で対峙していただろう。なぁ、美桜」
「それは‥そうですけど‥」
「それに琴葉。貴様の行動力も気に入っている」
「あの時は、体が勝手に動いただけで‥」
そんな私達の会話を聞いている武将達の中で、ため息が聞こえた。
「はぁ、馬鹿みたい。こんな弱そうな女二人をここに置くなんて」
「あなたは‥?」
「こいつは家康だ。仲良くしてやってくれ」
「政宗さん。勝手に自己紹介しないでください。俺は仲良くする気なんてありません」
「(すごく不機嫌ね。挨拶はしておくか‥」
「家康さん、「「これからお世話になります」」
「‥‥」
「「(私達を歓迎してないのはすごく分かった)」」
静観していた光秀さんが信長様に質問した。
「信長様、この小娘二人が賊を対峙したとは‥?」
「そうだ。美桜は見たことがない体術で敵を払った。美桜、あの体術は何だ」
「(そうか。この時代に空手はまだないんだ。沖縄発祥の武術だから、本土に上陸するのはまだ先か‥)」
「あの体術は空手と言って、私達の故郷にある体術です」
「聞いたことのない体術だな。それにお前達の故郷はどこだ、?」
「それは‥お答えできません。遠いところにある、とだけしか言えません」