第17章 思惑
帰蝶達に連れて行かれた先は、大阪の堺にある異国商館だった。
話を聞いていると帰蝶はそこで商館長をしているらしい。元就の方は表向きでは帰蝶の商談相手とされており、実際は利害の一致で組んでいるそうだ。
「(ここにきて二日は経つけどこれくらいしか情報がないな。もっと有益な情報を集めないと‥‥)」
用意された部屋で私は紙に集めた情報をメモしている。バレても良いように横書きでカタカナにして書いている。
身の安全を今の所まだ約束されていて、商館内であれば行動はある程度許されている。
「(ここの女中さんにお願いして掃除でもさせてもらおう。その時に通りすがった人から聞き出せば良い)」
早速女中頭にお願いしに行くと即採用された。どうやらここは女中を除くと男しかいなく、女のお客が初めて来て嬉しかったそうだ。
「(ここでは来客扱いなのね。‥‥と言う事は女中さん達には裏で何をしているか全く話していないようね。‥‥でもこの人達には知らなくて良い事。知ってしまえばいつも通りに過ごせない。)」
もしここにいる女中さん達に危害が及べば絶対に助けよう、そう思いながら掃除をしていると見知った顔が歩いて来た。
「(あの人は、!でもどうしてここに?)」
人違いであって欲しいと思いながら話しかけた。
「あの、人違いであったらすみません。‥‥あなたは慎太郎さん、ですよね?」
男も私を見て驚いた顔をしながら頷いた。
「はい、お久しぶりです、美桜様。改めて言わせて下さい。千姫様のお命を助けていただきありがとうございました」
頭を下げられ、慌てて顔を上げて下さいと言う。
「何故、慎太郎さんがここに?千の護衛は‥?」
「ここでは話せません。こちらへ」
どうやら込み入った内容らしい。慎太郎さんに近くの部屋に案内され、私達はお互いどうしてここにいるのか話した。