第3章 鬼に稀血
実弥は仁美の体の力が抜けて、寝息が首のすぐ後ろから聞こえるのを確認すると。
彼女が寝やすい様にそれは大切に扱った。
少しの揺れが仁美の目を覚ましてしまわないか。
自分の肩に掛かっている仁美の手がずり落ちてしまわないか。
仁美を担ぐ時はいつもそんな事に気を遣って歩いていた。
……本当は俺の顔なんて見たいはずないのに…。
それでも自分に無防備に体を預ける仁美に、何度も何度も胸が痛んだ。
そうして歩いているのだから、早く歩ける訳が無かった。
この旅は久しぶり会った2人にとって長い旅になるのだろう。
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ーー
ーーー
「………………。」
仁美が目を覚ますと、布団の上で知らない天井が見えた。
仁美は何処かの宿だと言う事をすぐに理解した。
起き上がり時計を見ると既に夜の7時を超えていた。
「??!!!」
こんなに夜まで寝たのは初めてだった。
「あの時計ネジが止まってるのでは???」
「いや、お前が寝てたんだよ。」