第4章 自覚
待って。
意味がわかんない。
なんで。
今。
関係…………。
なくない?
「なぁ、聞いてんだけど」
「な、なんで今、それ」
「いいから答えろって。こいつと寝たかって聞いてんの」
ぐい、て。
いろんなところ殴られた跡も、出血の跡もある柳瀬を足で踏み潰して。
暁が、あたしを睨む。
「…………っ」
何。
なんでこんなに怒ってんの。
なんか。
何。
声。
出ない。
「…………あっそ。まぁいいや。こいつ捨てといて。もういらねーから」
「柳瀬!」
思い切り蹴り飛ばすと。
柳瀬から小さく呻き声が聞こえて。
咳こんだあと、痛みのせいか顔が辛そうに歪む。
「なんで?これ、暁がやったの?」
酷い。
こんなの酷すぎる。
あちこち傷だらけだし、左目なんて腫れ上がって目開いてない。
頬も。
痛々しそうに腫れ上がって。
きっとこれじゃ身体もかなり殴られたんだ。
「…………ここはこーゆー世界なんだよ莉央。覚えとけ。」
「何それ。わかんない。柳瀬なんもしてないじゃん!」
「なんもしてなくねーだろ、なぁ雅」
「待ってやだ!暁やめて!死んじゃう!」
無抵抗の柳瀬を何度も何度も蹴り飛ばし、暁の靴に柳瀬の血が、飛び散った。
「お嬢!離れて」
「やだやだっ!!柳瀬が死んじゃう!!」
羽交締めしてあたしを押さえつけるヤスの腕に噛みついて、柳瀬の身体へと覆い被さる。
蹴られる。
そう思って目を閉じるけど。
痛みなんて全然来なくって。
目を開ければ。
柳瀬が暁の足を左手で掴んでた。
「やなせ…………」
「さすがに莉央ちゃん殴れば会長、黙ってないんじゃないすか、暁さん」
「…………おまえ、かっけーなぁ。女の前だとそーなんの」
「柳瀬!」
「つーかおまえ」
膝を折って。
視線を柳瀬よりも少し上の高さまで下げると。
「まだまだ全然元気じゃん」
右手で柳瀬の頬を思い切り掴みかかり、頬の痛みで柳瀬の顔が歪む。
「…………」
しばらくふたり、睨み合ったあと。
暁が吐き捨てるように柳瀬を離した。
「…………とんだ茶番だな」