第2章 情緒
「…………ああ、苦しいね」
抱きしめる手が離れて。
息が、出来る。
「俺もずっと苦しかったよ莉央ちゃん。ここ着くまでずっと息できなくて苦しかった」
涙も唾液も垂れ流して。
嗚咽が漏れる。
咳込みが止まらない。
喉がヒューヒューなってる。
ドサって。
押し倒して。
柳瀬の、右手が伸びた。
やだ…………っ。
またあの苦しいの。
「や…………っ」
無意識に庇った首より上。
右と左の頬をむにゅって掴んで。
柳瀬が。
深く息を吐き出した。
「駄目俺。また、傷付けた。傷付けたいわけじゃないのに、いや、がっつりエグいの付けたい、泣かせたい。大事にしたいのに、壊したい。汚したい。ねぇほんと、監禁していい?誰の目にもうつしたくないし俺以外の空気吸わないで、触んないで」
…………や、ば。
だいぶメンタルヘラってる。
体重。
掛けすぎだし。
普通に重い。
「勝手なことばっか言ってんなし。あたしもおまえにめちゃくちゃ怒ってんだけど」
「…………いいよ、聞く」
「おまえ昨日何した?あれだけのことしたくせになんでいきなりいなくなんの。いっつもいっつもうぜぇくらい目の前チョロチョロするくせに。なんでいないの。」
「莉央ちゃん口悪いね、ほんと」
頬から手を離して。
指先が、口の中を掻き回す。
「ねぇそれ、俺探してたって聞こえるよ?」
「っせ、探してた!!悪い?」
首を振って指追い出して。
真っ直ぐに柳瀬を見上げた。