【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第1章 誰よりも
「ごめ……」
「謝らんでええ。君が悪いわけちゃうやろ」
「私の解放戦力が他の小隊長に比べて低いのは自覚してるんだけどさ! そこをどうしても言いたくなっちゃうんだろうね」
「こないだの会議で言われたんか」
「あー……まあね」
頬を掻きながら思わず苦笑い。バレないようにって思っていたのに、結局バレちゃったなあ。何でこんなに勘がいいんだか。
先日あったのは他の隊の小隊長数名との会議。私は防衛隊の中でも特殊な小隊──亜白隊長や保科くんが問題なく本獣を討伐するための支援を優先に行っている遊撃部隊の小隊長をしている。
できる限りの懸念点を無くし作戦の成功率を上げるため余獣の討伐はもちろん、亜白隊長の射程距離内へ本獣を誘導したり、危険度の高い怪獣に接触して情報収集、逃げ遅れた住民の避難誘導など……その場の状況に応じて多岐にわたる任務をこなすことが多い。
亜白隊長や保科くんの指令を受けて動く他の隊とは違って、私の小隊だけは私の指示に従って独断で動く私の小隊をよく思っていない人も多い。
他の隊に比べて明らかに怪獣討伐数が少ないことと、私の解放戦力が二十八パーセントと他の小隊長に比べて低めなことから会議など他の隊とバッティングするような場面では必ずと言っていいほど見下されることが多い。
倒した数や解放戦力が全てじゃないことはわかっている。わかってはいるけれど……。
「防衛隊の穀潰しだってさ。残念ながら言い返せなかったよ、あはは」
「無理に笑うな」
「……私が弱いから隊のみんなまで馬鹿にされて、悔しくて……」
「ほんであんな元気なかったんか」
「いつも通りにしてたつもりだったんだけど。保科くんには何でもお見通しだね」
力なくへにょりと笑ってから胸ぐらにあった保科くんの手をそっと退けた。はずなのに──今度は私の肩を優しく、力強く掴んだ保科くんと真っ直ぐ視線がぶつかり意思の強そうな瞳に息が詰まったような感覚に陥る。蛇に睨まれた蛙ってこんな気分なのかな。いや、ちょっと違うか。