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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第5章 ♡心も体も恋に堕ちて


「あのね」
「うん」
「さっきはビックリしたの」
「僕が急ぎすぎたな。ほんまごめん」
「その……ね? ビックリしただけで嫌だったわけじゃないから……」
「わかっとる」
「うん……だから」

 もう一回。あまりにも小さすぎた私の声は宗四郎くんに届かなかったかと思ったが、そんなことはなくて。ほんのりと頬を桜色に染めた彼は嬉しそうに目を細めると、私の顔を両手で包み込んでゆっくりと……壊れ物でも扱うかのように、優しく唇を重ねてくれた。
 先ほどの性急なものとは真逆でたくさんの愛しさが唇から伝わってくるかのような、お互いの気持ちを確かめるようなキス。気付かないうちに強ばっていたらしい私の体も、心も、じわりと宗四郎くんによって絆されていく。
 何度も角度を変えて丁寧に重ねられる口付けに酔いしれていると、不意に下唇をぺろりと舐められる。それはきっと優しい彼からのささやかなお誘い。

「んあ……」

 控えめに口を開けると、分厚い舌がぬるりと私の口内へと差し込まれた。最初は舌先を少し絡めて、次は上顎を刺激し、歯列をなぞって、また舌を絡める。ひとつひとつ私の意思を確認するかのように行われるそれに、私の思考は次第に蕩け始めていく。
 触れ合う口の合間から漏れる吐息が随分と甘くて本当に私の声なのか疑問に思えてきた頃、名残惜しそうに唇を離した宗四郎くんと私の間には透明な赤い糸が繋がっていた。

「は……ふ……」
「気持ちかった?」
「ん……」
「ん、僕も」
「ほんと……? 私、何もしてない……」
「んなことあらへん。一生懸命応えてくれたやろ。それだけで僕は嬉しいんやで」

 すりすりと喉元を撫でられ思わず目を細めた。甘やかされているなあ、なんてどこか他人事に感じながら宗四郎くんの手に頬を擦り寄せる。今度は私が猫になる番らしい。
 もう一度私に口付けた宗四郎くんは力の抜けきった私の首筋に唇を当て、舌を這わせた。なまめかしく動くそれに合わせて「ぁ」と小さな声が漏れ、喉を晒すようにびくりと体が震える。無意識に宗四郎くんの肩を掴んで距離を取ろうとするが、力の差は歴然で……びくともしない彼は私の抵抗など意に介することもなく、甘美な眼差しで私を見上げていた。
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