第22章 繋がる鎖、壊れる仮面
ヴィラン連合side
重たい扉が閉じる音が、静まり返った空間に響いた。
荼毘と共に想花──“カゼヨミ”が去ってから、しばしの沈黙が支配する。
誰もが、言葉を失っていた。
「……なんだよ、それ……」
トゥワイスが、頭をかきながら唸るように呟く。
「じゃあ、あの子……ヒーローだったってのか? 何ヶ月も一緒にいて、飯食って、笑って……俺、最近じゃ俺の手もギュッてしてくれたのに……!!」
声が震えていた。
トゥワイスにとって、“カゼヨミ”は仲間だった。
裏切られた、なんて思いたくない。だけど──信じてた分だけ、心が軋んだ。
「……あいつ、大丈夫かよ。荼毘と一緒に行っちまって……
壊されちまわねぇか……!」
「心配すんな、トゥワイス。アイツが、すぐ壊れるタマかよ」
スピナーが、低く吐き出すように言う。
けれどその言葉に込めた強がりは、彼の目に浮かんだ微かな迷いで崩れていた。
「けど、荼毘だぜ? あの目で見てただろ、さっきの……。
まるで──」
「──好きな女を手に入れた顔、してましたね」
不意にトガが笑った。
ぽつりと落とされたその言葉に、また空気が揺れた。
「いいじゃん。壊れるの、好きでしょ? 私たち」
トガの目は、ぞくっとするほど澄んでいた。
さっきまでショックで曇っていた顔は、もうどこにもない。
「血だらけで、ボロボロで、傷だらけで……
自分の全部を投げ出した顔って、ほんっとに、綺麗じゃない?」
「……おい、トガ……」
スピナーが眉をひそめるが、トガは構わず続けた。
「壊れてもいいの。壊れるほどに、好きってことじゃん」
「けど、あの子が選んだのは……ほんとに俺たちなのか?」
トゥワイスが、ぽつりと呟いた。
「信じてたんだよ、俺は。
“カゼヨミ”が、誰よりもここにいてくれるって……!」
沈黙の中で、誰かが息をのむ音がした。
そして次の瞬間──部屋の視線が、ひとつに集まった。
それは、"カゼヨミ"の秘密を知っていた男、唯一の「傍観者」──コンプレスへと向けられていた。