第18章 きみの隣、それがすべて
一方、クラスメイトたちの間でも騒ぎは絶えなかった。
「おいあれマジでホークスやんけ!?」
「まって、あいつと付き合ってた!?」
「いや、スーツ似合いすぎて記憶飛んだ……」
体育祭でも文化祭でもこんな騒ぎは滅多にない。
まさか、No.2ヒーローが、ステージに――しかもエスコートとして現れるなんて。
中でも爆豪は、腕を組んだまま顔をしかめていた。
「……やっぱあの時、怪しかったんだよ。あの言い方」
「え?いつ?」と切島が聞くと、「知らん」と一言返して視線を逸らす。
それは照れでもなければ、嫉妬でもない。
ただ、答え合わせのように、淡々と苦く呟かれた独り言だった。
そのとき、ちょうど舞台裏から回ってきた轟が、静かにその輪へと戻ってくる。
「……やっぱりホークスだったんだな」
ぽつりと呟いた声に、全員が振り向いた。
「轟!お前、エスコート役だったはずじゃ――」
「……譲った」
その言葉に、爆豪がわずかに眉を動かす。
「……お前も知ってたんか」
焦凍は頷きもせず、ただ前を見たまま答えた。
「……見てたら、わかるだろ」
視線の先、ステージ中央。
そこには、誰よりも自然に並び立つふたりの姿があった。
言葉もなく、視線を交わすこともなく、
ただふたり、静かにステージを見つめていた。
その横顔はどこか、眩しさに目を細めているようでもあった。
――その頃、観客の視線を一身に浴びながら、
主人公と啓悟は、ステージ中央に立っていた。
啓悟の翼が陽光を受けてきらめくたび、歓声が再び爆発する。
彼は何も動じない。
ただ、誇らしげに彼女の手を引き、どこか満ち足りた表情で立っていた。
まるで――
「この場にいるのが当然だ」と言うように。
そして、司会者がようやく声を取り戻す。
「え、え〜……では、1年A組、星野 想花さんでした!
エスコートは……正式な登録とは異なりますが、ホークスさん……で、で間違いないようです……!」
観客はまた歓声と笑い声に包まれた。
だが、誰の目にも映っていた。
ただのサプライズでも、偶然でもない。
――彼女の隣に立つ、その姿こそが“答え”だった。
ふたりがステージを降り、幕の奥へと姿を消した瞬間、
会場は爆発的な拍手に包まれた。