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【ヒロアカ】re:Hero

第4章 優しさの証


ガラリ――

扉を開けて教室に足を踏み入れた瞬間、空気がぱっと動いた。
視線が、一斉にこちらへと向けられる。

「想花ちゃん、大丈夫!?」
一番に駆け寄ってきたのは、お茶子ちゃんだった。
まっすぐ心配を向けてくれるその目が、なんだか嬉しくて――

『うん、もう大丈夫。ちょっと頭ぶつけちゃっただけだよ』

そう笑って見せると、彼女はほっと胸を撫で下ろした。

「よかったぁ〜……ほんと、びっくりしたよ。あんな氷の中でひとりで轟くんと向かい合ってて……」
「すっごかったよ!」

『ありがとう』

そこへ、今度は三奈ちゃんが勢いよく飛びついてくる。

「ねぇねぇ、マジでかっこよかった!もう戦ってる時、想花女神かと思ったんだけど!!」

『わ、ちょ、女神は盛りすぎ……!でも、ありがと』

「つーか、俺ちょっと惚れかけたわ。危なかったー」
と上鳴くんがにやにやしながら言えば、

「お前は誰にでも惚れるだろ、バカ」
後ろから爆豪くんが、呆れたようにツッコミを入れる。

自然と笑みがこぼれた。
こんな風に声をかけてくれる人がいて、笑ってくれる仲間がいて。

(……なんか、あったかいな)

ほんの数日前まで、自分がここにちゃんと馴染めるのか不安だったのに。

「……ま、あの氷の中で動けた時点で、お前はただもんじゃねぇよ」
ぼそっと呟いたのは、爆豪くん。
ぶっきらぼうなのに、そういう一言が不意にあったかくて。

『ん、ありがと。“かっちゃん”』

「呼ぶなッ!!」

『ごめんって!』

思わず吹き出した笑いが、教室に広がっていった。

その中で、ふと隣を見る。
席についた轟くんが、静かにこちらを見ていた。

目が合った瞬間――ほんの少しだけ。
彼の口元が、やわらかく緩んだように見えた。

(……やっぱり、素直じゃないなぁ)

だけど、それが嬉しくて。
私もふわりと微笑み返すと、ゆっくりと自分の席へと向かった。

新しい毎日が、静かに、でも確かに――動き出していた。
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