• テキストサイズ

ガラス玉に恋をして【夏目友人帳】

第1章 里帰り





久々に実家のある田舎に帰ってきた。
仕事も忙しくてほぼ帰れなかったからか、故郷ののんびりした空気感や自然豊かなその光景にホッと胸を撫で下ろす。
「彼氏はまだできないんかい?」
祖母にそう言われて耳が痛い。まだ結婚を見据えて付き合えるような相手はいない。

恋愛から目を逸らすように、仕事に没頭していた。
『ちょっと散歩行ってくる』
いたたまれなくなり、サンダルを履いて庭に出る。

実家の近所は田舎だ。家の目の前は田んぼが多くて山がある。
綺麗な緑の山々に、心が癒された。
ぼんやり歩いていると山の麓についていた。
『あれ…』
木と木の間に何かうごめいている。
何だろう。
気になって、そこに歩いて行った。
するとまるまる太った猫が茂みから姿を現す。
『か、かわいい!!』
三毛猫…?招き猫みたい…見たことない種類の猫だった。
ちょっとブサカワなその見た目に思わずクスリと笑う。
その猫は私をジーッと見つめたかと思うと突然走り出した。
『猫ちゃん…!』
そのあとをついていく。

『え…人…?』
少し歩いた山の中、誰かが倒れていた。
『大丈夫ですか!?』
慌ててかけよりその人の側に座る。
綺麗な黄金色の髪に真っ白な肌の男性。
「…ん」
その人がゆっくり目をあけた。

…わぁ、何この人…すごい綺麗。
儚げな雰囲気のその男性に釘付けになる。
その人の瞳が私を捉えた。
まるでガラス玉みたいな瞳だった。
その男性が一瞬、私を見つめて目を見開く。
『あ…あの、大丈夫ですか』
「え…ああ…すみません。少し気分が悪くて。」
男性がゆっくり起き上がる。さっきの猫ちゃんがその男性の膝の上に座った。
『可愛いですね』
「ありがとうございます。この猫、うちの飼い猫なんです」
そう言って微笑むその男性に思わずドキッとしてしまう。
その男性は、何か考え事をしているように私を見つめた。
「この近くにお住まいですか?」
『!はい、直ぐあそこの田んぼの近くの家で』
「ご迷惑をおかけしてしまってすみません。今度何かお礼に伺わせてください。」
『そんな、気にしないでください。あの…貴方は…』
「夏目貴志と言います。」

これが、彼との出会いだった。


/ 2ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp