第14章 触れない距離
それから数時間、なんだかんだと理世は三蔵の部屋で過ごした。それも一定の距離を保ったまま…時には読み終わった三蔵の新聞を受け取って目を通すものの、時期に小さく笑いながら返したり…時には三蔵の『コーヒー』に淹れてあげたり…そんな他愛もない時間を過ごす中、
コンコン…
そう三蔵の部屋を叩く人がいた。
「…誰だ」
そうぶっきらぼうに三蔵が答える中、ゆっくりと扉が開く。
「…あれ?理世も一緒ですか?」
「あぁ」
「あ、八戒、どうかした?」
「いえ、・・珍しい組み合わせだな…と思ってしまって…」
「でしょ」
「それで、何の用だ」
「あ、いえ、実はさっき買い物の途中で聞いたんですけれど…」
そうして八戒が切り出したのはこの町で今夜、花火大会があると言う事だった。
「…へぇ…花火かぁ…」
「理世知ってます?」
「ん!私のいた所でも大きな花火大会あってね?!」
「へぇ、俺見たことないから行ってみたい!」
「だそうですよ?三蔵はどうします?」
「俺は却下『行こうよ!三蔵!』…・・・聞いてたか?」
「え?」
「行かねぇ」
「なんでよ」
「人混みがうざってぇ…」
「えー…でも楽しいかもよ?」
「花火ならここから見えるだろうが」
「……確かに!」
「ならこの部屋から見たらいいんじゃない?」
「なんでそうなる」
「俺!俺直接見たい!!」
「んー、では僕は悟空と行ってきますね?」
「こいつも連れてったらどうだ」
「どうしますか?理世」
「…三蔵一人はかわいそう…」
「ププ…」
笑いをこらえるので必死な八戒と悟空だった。それでも理世は一緒に見たいなと話している。
「…どうします?」
「…ハァ…なら行くときに声かけろ。」
「行かれるんですか?」
「少しだけだからな?」
そう話していた。