第31章 嫉妬
不意に問われた三蔵。しかし顔色を一つも変えることなく煙草に火を点ければ咥えて話し出す。
「…別に、俺としたらこの先理世が足手まといになるのは解りきっている。だからと言って離すのもあいつが壊れるだろうしな」
「あいつというのは…理世ですね」
「あぁ。」
「…しかし得体のしれない街で放置することの方がよほど危険な事も間違いないですし…」
「…フン…ここまで着いて来たのも仕方ねぇ事でもあるんだがな…」
そう話していた。
「…どこか安全な場所でもあれば…いいんですが…」
「あるか?この地に、今の現状で、安全な場所なんかあるワケねぇだろう」
「そうなんですよね…」
「西の異変を止めに行くのだってどれだけの時間がかかるかわからねぇ。だからこそ、急ぐ必要もあるし、だからと言って何かを犠牲にすることも仕方ねぇ事だってある」
「…はい…」
そういう三蔵の言う事は至極当然、当たり前であり、真実だった。だからこそ、八戒もその言葉を否定することは一切出来なかった。
「…でも、それを理世にいうのは…少しばかり躊躇われますね…」
「泣き叫ぶか…駄々こねるか…」
「すんなり引くという考えはないのでしょうか?」
「あるか?今のあいつに」
「……ですよね…」
「深く繋がりすぎたせいだろうな…」
「…悟浄のせいですね」
「まぁな。余計な種しかまかねぇんだから…あのバカは」
半ば呆れ気味に、それでいて理世の事を心配しているのも手に取る様に分かった八戒。どうすることも出来ないままに悟空が戻ってくるまでの時間、少しの沈黙が部屋を包み込むのだった。