第10章 ド屑
エルシはどうしたかしら?と見れば、彼女は壁際の椅子で号泣していた。
スヴェン様とマルクス様に両側からなだめられ、何故かセヴェリが彼女の涙を拭いてやっている。
セヴェリは優しいから巻き込まれたのだろう。
私は王子を振り払って彼女の前に歩いて行く。
「分かったでしょう?私達仲良くしましょうね。『第二夫人』さん」
エルシの首を扇でトントンと叩く。
エルシは又堰を切った様に泣き出す。
―――これで暫くは多方面から静かになるでしょう。
いつもの様に、適当に何か摘んで……と考えていると―――。
肩を掴まれ、振り向かされた。
王子だ、と認識した時には彼は私に口付けている。
は?は―――?
又拍手喝采が巻き起こった。
「余は少しお前を蔑ろにしていたかもしれんな。
愛しているぞ……レーナ」
瞬間、ぶわっとサブイボが全身に浮き上がる。
王子だという事も忘れて、扇で顔をはたいてしまった。
「はっ、……やはりレーナは面白いな」
扇は王子に触れる前に手で掴まれてしまう。
そして今度は扇を掴む手にキスをする。
「ゆめゆめ忘まれるな、余は余なりに、お前を愛している」
―――このっ、このスケコマシ!!
国一の顔整いなのを自覚していて言うんだから!!
私はセヴェリをエルシから引き剥がし、食事のテーブルに向かう。
―――絶対私から『愛してる』なんて言ってやらないんだから!