• テキストサイズ

【短編集】悪役令嬢RTA

第9章 いぇ~い、王太子殿下見ってる~?


―――そしてその日を境に四人は消えた。
どの程度の情報が出回っているのかは皆口を閉ざしている為分からないが、四人は『最初からいなかった』ものとして扱われている。

マクシミリアンだって、シルヴィアが嫌いだった訳では無かったのだ。
けれど后教育に励み、どんどん大人の淑女になっていく彼女を見る度、将来自分が背負うであろう責務を見ている様で重苦しくて。

けれど、ユーリアはマクシミリアンをただ一人の男性として見てくれた。
市井で生まれ貴族社会に馴染めないとこぼす彼女の助けになってやりたくなり―――いつの間にか恋している。

シルヴィアには向ける気持ちとは明らかに違うこの感情はマクシミリアンを暖めてくれた。
ユーリアを幸せにしてやりたくて。

だがそれをシルヴィアが許さないのを見て、もう彼女を手放した方が良いと分かりながら心は離れず、むしろ熱く燃え上がってしまう。

王太子と言ったって、何でも自由になる訳ではない。
それでも、ユーリアだけは自分の手で救いたくて。

なのに―――、
『シルヴィアおねえしゃまあ!早く!!早く!!頑張ったユーリアにご褒美くだしゃい~♡』
マクシミリアンに掛けた声よりもっと甘い音で囀るユーリアは本当に幸せそうで。

マクシミリアンは忘れられなかった。
シルヴィアにぶたれ、恍惚の表情を浮かべ、獣の様に裸で転がり回る三人が、瞼に染み込んで。
まるで母の乳を飲む様にシルヴィアの手足に絡み付いた親友達。
縄で縛られたりしたのだろうか、あの白い手に鞭を持ち引っぱたいたり、上手に痴態を演じられたら白い足で踏んづけて貰えるのだろうか―――?
羨ましい。

三人が羨ましくてたまらない。
シルヴィアを探し出し、その白い足に縋り付きたい。
―――近々又マクシミリアンには婚約者があてがわれるだろう。

でももうそれが誰であったとして愛せないのは分かっている。
悠然と笑み、別れを告げたシルヴィアが脳裏に焼き付いて離れない。
―――もう、人としての限界が見え始めていた。
それでも逃げる事は許されない。

―――自由になった四人がひどくひどく羨ましくて。
マクシミリアンは今日も独り、さめざめと白いシーツの中で泣く事しか出来なかった。
/ 129ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp