第6章 断罪イベントは蜜の味
「殿下……もうお終いですわね」
私はやった!!
最早殿下含め、エメリと関係を持った男性達の信頼は地に落ちた。
これから死ぬまで婚約者や細君達に頭が上がらないだろう。
なのにどうしてかしら。
目頭が熱い。演技では無い本当の涙がホロリと零れた。
エメリを激昂してはたいてから、好き勝手言われて『悪役令嬢』なんて呼ばれていた私の涙に周りの方々がざわめきを強くする。
「ヴェロニカ……」
「フィリップ殿下」
こんなに綺麗な青い瞳を真っ直ぐ見たのはいつぶりだったのだろうか?
いつからヴェロニカはこの瞳を見るのが怖くなったんだろうか?
―――愛していた、愛されたかった。
ただそれだけなのに。
「殿下、まだレーヴェンヒェルム嬢と連れ添うつもりですか?」
私が問えばフィリップ殿下は項垂れながら頷く。
それは王太子を退位して、男爵家に婿入りするという事だ。
殿下にはまだ弟も繋累も居る。
王位を継ぎたい人は居るだろう。
「フィリップ王太子殿下、愛していましたわ」
側まで歩いて行って手を差し出す。
「私はヴェロニカが苦手だった。一生懸命妃教育を受けているのを見るのが苦痛だった」
予想通りの答え―――。
でも何だかスッキリした。
「さようなら、フィリップ」
「さようなら、ヴェロニカ」
手を握り合った。