第13章 天翔る悪役令嬢
「クリスティ、黙っていなければいけなかったとはいえ、誤解を招いてしまった事は詫びよう。不安にさせてしまってすまない」
ユーリウス様もクリステル様を抱き締めて少し泣いている。
きっと彼女を見て、今生きている幸運を―――私達の奮闘を噛み締めているのだろう。
私達は勝った!
「こんな格好ではありますが、勝利を持ち帰った婚約者にご褒美をくださいませんか?」
ぎゅっと指を絡めもう片手を差し出す。
「あ……あぁ。ティナがそうしたいなら」
「では一曲だけ」
身体を組み交わし流れる曲に合わせてダンスホールに躍り出る。
チラリとユーリウス様を見れば、クリステル様に寄り添い何やら話し込んでいた。
この平和も泡沫―――また暫くしたら私達は出撃しなければいけないだろう。
そして―――勝利し続けなければいけない。
今感じているこの方の体温―――これを守る為に!
―――そして約束通り一曲踊り終わると私達は又クレイドルに戻りラボへと帰還する。
「ユリ、これからもよろしくね」
「ティ、こちらこそ」
私達は又コツンと拳を打ち合わせた。
―――まだ私達の戦いは始まったばかりだ……。