第12章 私、改心しました!
―――私の名前は『』。
ううん、今は『マルティナ・パルムクランツ』、伯爵令嬢。
私が前世の記憶を取り戻したのは半年前―――。
ある日突然私は『マルティナ』ではなく、『』として目覚めた。
記憶は混在し、私は大恐慌に陥り、鏡の前で考え込む事数時間。
取り敢えず私は『マルティナ』として生きるしかないんだ、というのが結論だ。
マルティナは傲慢な女だった。
級友でありながら身分の低い『フレヤ・ラーゲルベック』を表から裏からいじめ倒していた。
気に入った男性―――宰相の子息、『アロルド・ボードストレーム』様をハニートラップで籠絡。
そして皮肉にもフレアが藁にも縋る思いで掴んだのがアロルド様の手。そんな彼女を彼は気にかけ、多分、心奪われる―――。
いじめは時には自ら出向いてヤキを入れ、時には彼女の悪い噂を無い事無い事流布しまくり、時に周りを巻き込んで嫌がせをし、時に体操着や靴をゴミ箱に捨て、気が向けば無理矢理連れ去ってリンチ。
それだけではない、マルティナは使用人達にも厳しくて。
朝やってきたメイドに洗面用の水を掛けたり、両親のいない場所では食事の卵を給仕に投げつけ、気に入らない事が有れば床に頭をつけさせ踏みつけた―――。
思い出すのもおぞましい記憶達。