第23章 あらぬ疑い
「寝ているドクターは体温が高くて昼寝するのに最適だそうだ」
え、何を言って……?
俺はソーンズさんが何を話し出したのかさっぱり理解出来なかった。いや、言ってることは分かるけど、その……この人って、そんなにお茶目なこと言うタイプだったのか?
「足を避けてやろうか。そこでドクターが目覚めるまで待っててもいいだろう……ムースだったな?」
「は、はい……っ」
「こっちだ、ムース」
「へ」
ムースは一度、どういうこと? と言いたげに俺の方を振り向いた。俺だってどういうことなのか聞きてぇくらいだ。どういうことだ?
しかし相変わらずソーンズさんの顔は変わらないまま、寝ている大将の足をすんなり曲げ、そこに一人くらいは座れるようなスペースを空けてムースを振り返る。あとは目で、どうぞと促しているみたいだ。