第4章 『いっぷ』ではない事1
真人はチラッと手首の学園生用の色んな機能のある時計を見る。
「大丈夫、安全圏内」
序列の正式発表は月頭だが、お金が上下するとリアルタイムで大体の順位を知る事が出来た。
『なら良いけど』と答えて、真人のヒザに手をのせる。
「『いっぷ』、する?」
笑って言ってみた。
「良いよ。今位休んでくれ」
真人は優しい。それが心地良い。
だから私は黙って真人の制服を乱していく。
「ちょっ、いいって」
「そんな事言って、半勃ちじゃん」
「そりゃ隣に良い匂いの女の子がいるんだからさ」
すんっと手の甲を嗅いでみるが、分からない。
くんくんと髪を掴んでにおってみても分からない。
むしろ、『いっぷ』上がりだ。臭そうな気がする。
「そう?」
「天原の体臭とか洗剤の匂いとかすンだよ」
馨みたいに真っ赤にもならない、御厨お姉様の様に命じない、あの人とも……―――真人といる私は『かとる』ではない『美希天原』。
「『かとる』の部屋での『いっぷ』は、」
真面目に言う真人に首を振った。
「これは『いっぷ』じゃないよ」
―――キス。
唇を重ねる。ちゅっ♡って、触れるだけのキス。
もう一回。自然に口を開いた。
オープンマウスのキス。