【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第4章 後宮の外に毒の華が咲く④
月娘が壬氏に望んでいる事は分かっている。
だけど今は、こうして手を握ってあげる事しか出来ない。
この後宮ではそれすらも危険な事だと、高順の今の表情を見れだ分かっている。
また瑞月の部屋に月娘を呼べば、皇太弟としてでは無くて、ただ1人の男として月娘を求めてしまう。
壬氏はそれが怖いのだ。
自分にそうさせてしまう月娘を遠ざける事が、未来の2人の為になると信じていたが。
悲しいほどに今の月娘は、壬氏の想像以上に苦しんでいる様だ。
「……そう長くかからずに、月娘を俺の元に呼ぶから。」
「壬氏様!!」
そう言った壬氏に、周りに誰も人が居ないか高順は慌てて確認した。
「………………。」
月娘は壬氏の言葉に、嬉しいとも、表情を変える事もしなかった。
それが壬氏の胸を痛める。
「………壬氏にして貰う事は何も無いわ。」
次の瞬間には月娘の表情はいつも通りに戻って、壬氏の手を払った。
「………………。」
多少イラッとしたが、その言葉の意味は瑞月として月娘に接しない壬氏への怒りだと分かっていたから黙っていた。