【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第1章 後宮の外に毒の華が咲く
「もうこっち(後宮)にも話が広がりましたか…。」
玉葉妃が用意してくれた茉莉花茶を口に含みながら、月娘はゆっくりと言った。
「……皇帝から聞いただけで、あの人は何も知らないと思うわ。」
玉葉妃が言うあの人とは、もちろん壬氏の事だ。
「……あの人に言うつまりはありません……。元よりとっくに切れた縁です。」
2人で名前を呼び合ったのはいつの頃か。
月娘は懐かしくも思い出したくも無い記憶に目を伏せた。
それ以上壬氏の話はしたく無い。
そんな月娘の気持ちを玉葉妃は汲んだ。
「…貴方達の縁はいつ絡まったのでしょうか…。」
玉葉妃は2人の幼い時の話を皇帝から聞いている。
そんなの。
月娘が1番聴きたかった。
ぎゅっと手が見えない袖の中で、月娘の拳は握られた。
彼を瑞月と呼び。
彼から名前を呼ばれたのは遙昔の話だ。