【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
「瑞!」
月娘は高順に連れて行かれても、壬氏の名前を叫んでいた。
東宮を出て中庭にまで連れて来られた所で、月娘はようやく壬氏の名前を呼ぶのをやめた。
大人しくなった月娘を見て、高順は月娘から手を離した。
「…………瑞が私との婚姻を延期すると言ったわ…。」
「………………。」
月娘は力無く項垂れて、先ほど壬氏から言われた言葉を確認するように呟いた。
(……本当に月娘様に話したのか…。)
それで高順も壬氏が本気だと分かった。
「嫌だと言ったら、私との婚約も辞めるって…。」
「!!??」
月娘の目から再び涙が溢れた。
(何を考えているんだあの方は……!)
流石にそこまで壬氏が言うとは思っていなかったので、高順は驚いた顔をした。
これでは…。
絶対に壬氏の気持ちは月娘には伝わっていない。
自分の目の前で静かに泣く月娘を見て、高順は目眩がした。