【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第1章 後宮の外に毒の華が咲く
結果糸は…余計絡まっただけだ。
思い出したく無い記憶に壬氏は顔を歪めた。
いつもそうだ。
饒舌に動くこの口も、月娘の前だと上手く動かない。
あの美しい顔で見られて、何を言っても見透かされている様で。
いつも口を紡むんでいた。
『瑞月様』
幼い頃に笑顔で自分を呼んでいる月娘を思い出して、壬氏は硬く目を瞑った。
一方月娘は、壬氏と別れてから侍女達の元に向かった。
「…小閔(ショウ)は?」
「才人の一人の渼様の所の侍女と幼馴染とかで、顔を見せに行ってます。」
(…才人…下級妃か…。)
この後宮で目立った行動はすべきでは無い事は分かっている。
主に断りもなく、勝手に後宮を彷徨くとは…。
少し優しくし過ぎた…。
後宮を我が物顔で歩いている主に仕えて、自分も偉くなった気でいるのだろうか。
勝手に動いている侍女をどうしようかと悩んでいると、目の前から猫猫が歩いてきた。