【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第1章 後宮の外に毒の華が咲く
「…はぁ…。貴方と話していると疲れる…。」
そう言って月娘は壬氏に背を向けると歩き出した。
そんな月娘の姿が見えなくなるまで、壬氏はずっと月娘を見送った。
ー分かっている。
本当は、いつもこうして月娘に話しかけるのは自分の方だった。
後宮入りしたあの日から、月娘は『瑞月』に会いに来なくなった。
「壬氏様…。」
「……部屋に戻る…。」
1人になりたかった。
そうして戻る部屋は瑞月の部屋で無く壬氏の部屋だ。
どうせ瑞月になった所で、月娘はもう2度と会いに来ない。
彼女が何故壬氏と、この後宮では会ってくれるのか。
それは彼にも分からなかった。
(まだ私が小さい皇弟のままだと思っているのだろうか。)
まるで壬氏がちゃんと後宮でやらているのか、心配されている様な気分になる。
(いや、あの月娘が心配?)
そう思ってすぐに壬氏は考えを改める。