第2章 人形の家
人間にはムリ。
ということは、この犯人は人間以外……と思うと、背筋がゾクリと震えたその時。
「キャアアアッ!」
下の階から香奈さんの悲鳴が聞こえた。
全員が顔を合わせてから慌てて下の階へと走っていけば、そこには驚愕して立ちすくんでいる香奈さんの姿。
「香奈さん!」
「どうしたの!?」
またあたし達は部屋の光景に唖然とさせられた。
「家具が全部逆向き……!?」
テーブルや椅子にソファが裏返しになっていたり、テレビが後ろ向きになっていたり。
まさかの光景に唖然としたが、1番驚いたのはカーペット。
「……ナル、カーペット……家具がのったまま裏返しになってる」
こんなこと人間に出来るわけがない。
「ポルターガイスト決定だな」
「そんなのわかりきってるわよ。問題は犯人でしょ?ぜったい地霊よ!あしたにでもアタシが祓ってやるわよ。まあ見てなさい。オヤスミー」
「片付けるの手伝う気ないんだね、綾子。しかもあの自信はどこから……」
「ホントだよ。あの自信はどこから……」
やれやれと麻衣と共に溜息を吐き出す。
綾子が除霊を成功した所なんて見たこともないし、前のは除霊しても意味はなかったとはいえ、頼りない。
ふと、ナルの方を見る。
彼は何かを考え込んでいる様子であり、そのことでぼーさんと顔を見合せて首を傾げた。
「えらく考えこんでるな。なんか、気になることでも?」
「……反応がはやいと思わないか。心霊現象というのは部外者をきらう。無関係な人間が入ってくると一時的にナリをひそめる」
「へー」
「そうなの?」
「TVの心霊特番とかでもあるだろ。有名なオバケ屋敷に取材にいってもたいがいなにもおこらなかったっての」
「あー。それでTVみてよく興醒めしてたなあ」
「そそ、結衣みてぇに視聴者は興醒めしちまうんだよなあ。んで、ふつうは反応が弱くなるものなんだ。すごいラップ音がすると聞いていってみるときしみ程度だったり。それが反対に強くなるということは……反発」
「ぼーさんもそう思うか?」
「ああ。この家、おれたちがきたのにカンづいてハラたててるな。しかも、いきな大ワザ見せてくれるってこたァ、ハンパなポルターガイストじゃねぇ」
「……てこずるかもしれないな」
そして翌朝。
応接間の花瓶はぴくりとも動いていなかった。