第10章 悪夢の棲む家
「なん──なんですって!?とんでもない!なんの根拠があってそんな」
「まるで根拠のない話でもないんですよ」
広田達の様子を結衣達はベースのモニターから見守っていた。
「大胆だよねねぇ、広田さん」
「だねぇ。ここでハッキリさせようとするなんて」
双子は少し困惑しながらも、モニター越しで広田たちを見守る。
「実はですね──」
広田はナルから聞いた、悪質な嫌がらせの話や不動産屋から聞いた話をした。
その間に笹倉夫人の顔色は徐々に変わっていき、あからさまに動揺しているのが見て取れる。
「──ですから、お宅は犯人だとしか考えられないんです」
「い、言いがかりだわそんなの!証拠でもあるの!?」
「しかし自殺の件にしてもお宅以外に知っている人がいないんですよ」
「だから何なの!証拠はないんでしょう?名誉毀損だわ!そこまで言うなら証拠を出しなさいよ、証拠を!!」
広田が若干困ったような表情をしていると、居間の扉が開いた音がした。
そちらへと視線を向ければ、そこにはパソコンを抱えたナルが立っていてこちらに歩いてくる。
そしてテーブルの上にパソコンを開いてから、ある音声を流した。
「……これは?」
「今朝の5時56分にかかってきた怪電話から抽出した音です。この付近で拾ってきたサンプル音からするとベルの音は駅の電車到着時のもの。この家では昨日以来常にマイクが音を拾っています。同じ時刻に家の中で拾った音を調べてみると、同じベルの音が入っていました」
「……なんだって?」
「音の状態を調べると、音源までの距離がわかりす。状態が極めて似ている事からしても、電話がかけられた場所はこの家からそんなに離れたところではありません。測定距離は誤差があるからその範囲内。誤差が+-約8フィートですから、ほぼ5メートル。測定した居間から直径5メートル以内という事になります」
「という事は……」
「表の道路かこの家の中。あるいは──」
全員の目線は笹倉夫人へと向く。
「……そ……それが何よ」
「もうひとつ」
ナルがパソコンを弄って、一つの音声を流した。
「──出テ行ケ。出テ行カナイト祟リガアルゾ。サッサト出テ行ッテシマエ」
音声からはそんな音声が流れた。