第10章 悪夢の棲む家
「そうは言っても」
「あの!わたしたちの他にもちゃんとした調査員がおりますので、そこはご心配なく」
「他の調査員はご安心できる人物なんで」
「……それじゃ君たちはちゃんとしていないと言う事か?それと安心できないと?」
「「あっ……」」
広田の言葉に少女達は顔を真っ赤にさせた。
二人の少女は慌てた様子で手をパタパタとさせて、まるで金魚のように口を動かす。
「た、確かにわたしたちはまだまだ一人前とは言えませんけど!」
「でも所長ももう一人いる調査員も経験豊富なプロですので、ご安心ください!」
慌てる二人に翠は思わず小さく笑ってしまった。
「ごめんなさいつい……。話を聞いていただいてもいいですか」
「は、はい!すみません!あ、それでですね。依頼をお受けするかどうかは所長に相談してみないとなんとも申し上げられませんので、お返事は後日差し上げる事になるかもしませんがよろしいですか?」
「はい」
「では、まずお名前と年齢、ご職業をお願いします」
「阿川翠。二十四歳、会社員です」
「失礼ですが、そちらの方は」
結衣と名乗った少女が広田を見る。
「俺は広田正義。……翠さんの従兄弟にあたる。今回の件で翠さんから相談を受けた」
「では広田さんのお年とご職業を」
「二十四。公務員」
「……はい」
「それではご相談内容をうかがいます」
麻衣と名乗った少女の言葉に翠は顔を俯かせた。
何処か緊張しているかのような、なんとも言えない表情だ。
「……半年前ほど前、家を引っ越したんですけど……その家が少し──問題があるみたいなんです。ずっとマンション暮しだったんですが、父の一周忌を機に一軒家を買おうと母が言い出しまして。あの……父の夢だったものですから。それでいろいろと遣り繰りをして、今の家を購入したんですが……正直私は下見に行った時からちょっと嫌な感じがしてたんです──」
翠は下見で家に上がった時、廊下が酷く長く暗く見えた。
そのせいなのか彼女は家には上がれずに、ただ呆然と玄関に立ってしまっていた。
『翠?上がらないの?』
『──あ』
母の姿が見えた時、彼女は思わずほっとしてしまった。
『……ねえ、お母さん。なんだか暗くない?この家』
『そうねえ、奥行きがあるから。灯りをつければ気にならないわよ』