第8章 呪いの家
双子の背中を誰かが押したのだ。
すると目の前には海が広がっていて、二人は『落ちる』と錯覚した。
そして背後を見た時、そこには和泰が立っていた。
「──結衣さん、麻衣さん!?」
ジョンの声に二人は目を見開く。
自分たちは今、奈央が突き落とされた時の幻覚を見ていた。
そう気付いた。
「ダイジョウブですか!?」
その場に座り込む二人をジョンは驚いたように名前を呼ぶ。
「結衣さん、麻衣さん……!」
二人の瞳から涙が溢れていた。
「……和泰さんがやったんだね」
「奈央さんを、ここで突き落としたんだね……」
「鳥を殺したのも、犬を殺したのも車に細工したのも、みんな貴方なんでしょう!?」
双子は嗚咽を我慢するように泣き出した。
「……おまえさんは何者だ。なんの恨みがあってこんなことをする?」
法生の問に和泰は反応しない。
その代わりに鎌鼬が襲ってきて、法生の腕を切る。
「何者だ、言ってみろ!」
笑い声が響いてくる。
和泰に憑依している何者がか笑っていた。
「ナルを解放してどうする。なにが目的だ?」
「死が」
その一言を言った和泰はその場が飛ぶ。
そして岬へと走り出した。
「待て!止まれ!そっちは──」
海に落ちた音が聞こえた。
その音に結衣はその場にへたりこんで、涙を流す。
「なんで……なんでこうなるの……?あたしたち、なんの為に……きたの……」
「──これでよかったんです」
背後から彰文の声が聞こえた。
双子が慌てて振り返ると、そこには涙を流す彰文の姿があった。
「彰文さん……いつから……」
「少なくとも兄は、自分のしたことを知らずにすんだのですから──」
和泰の遺体は奈央の時同様に警察に連れていかれた。
家族は嘆き悲しみ、その輪に入ることが出来ない結衣たちはベースへと戻った。
「ぼーさん、リンさん。手当しよう。救急箱借りてきたの」
結衣の手には救急箱があり、彼女はそれを抱え込むように持っていた。
そんな彼女の目は赤く腫れていて、今も泣き出しそうな表情だ。
「おう。悪ぃな……」
「ありがとうございます」
結衣は無言で二人の手当をする。