第4章 放課後の呪者
眩いぐらいの笑顔を浮かべた法生に、結衣は麻衣が落としたトレーを拾い上げて真っ赤な顔をそれで隠す。
そんな姉を麻衣はやれやれと言いたげな顔で見ていて、そしてナルは三人のやり取りを見てからため息を吐き出した。
「……それで?きょうはどんなご用件でいらしたんですか?」
「あっ、そーそー。じつは仕事の話でいらしたのよ。ちょっとナルちゃんの知恵をかりたいんだけど」
結衣は法生からアイスコーヒーをお願いされた事を思い出し、慌ててグラスに氷とコーヒーを淹れてから彼の前に出す。
法生はそれに礼を言うと本題を切り出した。
「おれのバンドのおっかけで都内の高校生がいるんだが、その子がいうには自分のクラスのある席は祟られているらしいと。その席に座った者がここ三ヶ月ぐらいの間に、相次いで事故にあってるらしいんだ。事故にあったのは四人だが──その時の状況がまったく同じなんだと」
「今年日本は史上最悪の事故数だそうだが?」
「そうくると思った。交通事故じゃないんだ、これが。電車に引きずられたんだ、四人が四人とも。腕をドアにはさまれて」
「ええ!?」
法生の言葉に麻衣が声をあげ、結衣は口に含んでいた紅茶を勢いよく飲み込んでしまった。
四人が四人とも同じ事故。
それは普通では無い……と結衣は小さく咳き込みながら目を見開かせた。
「九月以来三回席替えがあって、その席に座った全員が事故にあってる。一人は軽傷ですんだが三人は大怪我。死人がいないのが幸いだが……ヘンと思わねえか?」
「ヘン……だね」
「だろ?しかもそれだけじゃない。その子のクラス担任が美術室を自室に使ってたんだが、そこに幽霊が出るって騒いでいるうちにバッタリ倒れて入院。原因不明の大量の吐血を繰り返してるってさ」
その話を聞くだけも、おかしいと分かる話であった。
麻衣は法生の話に『それヘンだよ!』と声を上げる。
「そう思うだろ?そこの学校じゃほかにも怪談やら原因不明の病気だ、事故だが山もりでさ。気味が悪いんでなんとかならないかってその子がいうんだ」
ふと、双子はある事を思い出した。
そしてお互い顔を見合わせると、同じ事を思っていることに気がついて頷き合う。
「──……ねぇ、ぼーさん。その子の学校って湯浅じゃないよね……?」