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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第3章 ファーストチャンス


先にオーダーしてしまったら、断られた時に気まずいな、と向かいの真珠を見る。

「マコっさん、月末、忙し?」
「月末?別に大きな予定はないけど、」

これ、と通学鞄の封筒からチケットを取り出す。

「前、雑誌の抽選を応募しとったやつで...
 予定、空いとったら、どうやか、思て」
映画?と差し出した一枚を受け取った真珠。

「あっ、これ、柴◯監督の新作っ!
 え、試写じゃんっいいのっ!?」
この人の外れ無いんだよねぇ、と目を煌めかせた。
 
「けど、1枚しかないよ?」
「あっ、と」
鞄から封筒を取り出す。
「ペア、やってん」
もう一枚のチケットに、ああ、と真珠は頷く。

「誰と行こうか、決めてへんくて...
 ちゅーか、当たるかもわからへんかったから、誘うに誘われへんし...」
「なるほど。そうだね。
 いいの?貴重なチケットなのに」
「誘うとるのに、そこ気にするん?」
そっか、とおかしそうに笑った真珠。

「ぜひ、喜んで」

傍らのバッグから手帳を取り出すと、予定に書き込む。
見ない方が良い、と分かっていても、つい、目線が止まる。


「第二市立図書館、使うん?」
手帳に挟まれていた利用者カード。
明日に、『返却期限』の文字もある。

「俺も、よう行くねん」

学生証に挟んだ同じデザインの利用カード。

「あそこが一番取り寄せとか早いから」
「自習室、使い易いしな」
「予約本をコインロッカー式でセルフ受け取りできるのいいよね」
「そうやねんっ!
 部活帰り寄ろうしたら、閉館ギリギリの時間やん?
 貸し出しでぎょうさん並んどるカウンターで『予約本を、』言うたら、他ん人持たせてもうて申し訳ないし。
 ロッカーからメールの暗証番号で取ってセルフ貸出機使うたら、滞在時間一分やしな」
「なのに意外と使う人いないっていう摩訶不思議」
「ロッカーあるん、ホールの端っこやし、案内もカウンターにポスター貼ってあるだけやからかな」
「第一に偏っちゃうんじゃないかな?
 ほら。第二って最寄り駅の小さい方の出入り口側だし、近くも氷帝くらいしか学校無いし」

そういえば、と納得する。

「マコっさん、マーケティングとか得意そうやね」
「そう?」
「めっちゃ分析うまいと思うで」

注文決めた?と問う真珠に、ほとんど見ていなかったメニューに目線をおろした。

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