第14章 保科家
あそこやと指差す彼の指の先を見ると、立派な日本家屋が…お屋敷じゃん…。
「ちょ、ちょっと待って…緊張がやばい…。」
私の手を握っている彼の腕を、握られていない方の手で掴む。
「あははっ、大丈夫やて。父さんは稽古の時以外は優しいし、母さんは基本おっとりしとるから。それに、来ること伝えてあるんやから。」
宗四郎さんも私の母に挨拶する時、内心はこんな感じだったのだろうか。
お家の前についてしまったので、彼の手を離そうとしたが、全然離してくれない。
さすがに手を繋いだままじゃダメでしょ…。
手を離してもらい、ずっと引いてくれていたスーツケースを奪って深呼吸をする。
宗四郎さんは1泊の為、ボストンバッグを肩に下げている。
深呼吸をして心を落ち着かせている途中でインターホンを押されてしまった。
女性の声がする。
お母様だろうか。
というか、なんて呼んだらいいんだろうか…。
宗四郎さんは私の母のことをお義母さんと呼んでいたけど、結婚前だし、まだ宗四郎さんのご両親の許可はもらっていないし…。
指輪はもらったけど…。
そんなことを考えていると、とても可愛いらしい女性が出てきた。
私の母より若い…。
宗四郎さんが母さんと言ったので、すぐに挨拶をして手土産を渡す。
柔らかく笑って中に案内されたのでついていくと、恐らく客間であろう場所に通された。
というか、めっちゃ宗四郎さんそっくり…。
「美影、そんな緊張せんで大丈夫やから。」
優しく頭を撫でて笑ってくれた。
宗四郎さんのお母様は先程、お父様を呼びに行くと言っていなくなった。
「めっちゃ手ぇ震えてるやん。冷たなっとるし。ほんまに大丈夫やから、僕も隣におるやろ?」
緊張で震えた手を握ってくれた彼の手はとても温かい。