第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
「え、何。今俺らが声かけてたんだけど。」
これで引くかと思ったナンパ二人組の男は、むしろ五条先輩と夏油先輩にくってかかるかのように、威圧的な態度だった。
「あ゛?」
サングラスを少し下げ、睨みつけるように五条先輩は二人を睨みつけた。
やることヤンキーと変わらない。
「悪いけど、二人は私たちと遊ぶんだ。」
裏腹ににこやかに言う夏油先輩。
「は?俺らが先に声かけたって言ってんだろ?彼氏でもねーくせに。」
夏油先輩はそう言われて、私の肩に手を回した。
「彼氏だったらなんだ。しつこいぞ。」
声が低くなり、夏油先輩はきっぱりそう言った。
珍しく怒ってるようで、私の肩に手を回しているから、表情までは見えない。
男二人はチッと舌打ちをして、ゲーセンから出ていった。
大きな手が私の肩にある…。
一歳しか年が変わらないのに、思ってた以上に大きな手ーー…。
「いつも絡まれるの?」
さっきの低い声とは違って、いつも優しい声に、私は戸惑った。
私の肩から手が離され、私は自分の胸がぎゅっとなる感じがして、夏油先輩を見ることができなかった。
「いえ。初めてです。」
「しつこかったねー。」
硝子先輩はあんまりに気にしてない様子で右手の小銭をじゃらじゃら遊ばせていた。
「んな、格好しってからだろ。」
五条先輩に言われ私は首を傾げた。
「え?格好?普通の服ですよ。」
「いや…普通……か?」
普通のショーパンにルーズソックス、上はキャミにシャツを羽織ってる。まぁ、少し色は派手かもしれない。
「オマエ、色々ギャップありすぎだろ。」
「ルーズソックス以外、ママの服だもん…。」
うちは貧乏だ。そんなに自分のものにお金をかけられないから、服は兼用してる。
両親ともに派手好きだし、服もギャル服ばっかり。
15で私を産んだ母は、今も若い。
「服くらい好きに着ればいいよ。それより、こんなところで珍しいね。」
「夏油先輩も。高専の服ってことは任務帰りですか?」
「まぁね。」
「助けてくれてありがとうございました。」