第3章 お前も一緒に来るか?
「おーい男子。油売ってないで、これ持ってー」
女子マネが購入したスポーツ用品の入った買い物袋を2,3つ下げており、國神達に持たせた。
「ここのやつ、他の店よりも安いしセールやっていたからね。スポドリの素とか多めに買っちゃったわ」
女子達はそう言いながら良い買い物ができたと満足している様子だ。
一方で逸崎は相変わらず落ち着いた様子でいた。
よく言えばそうだが、表情の変化が乏しいというか、緊張しているのかあまり笑っていない。
(無理に誘っちまったが、あんま楽しくねえのか…?)
國神は心配に思いながら、前方で歩く彼女の背中を見つめる。
次は文房具コーナーに移動し、逸崎は女子マネと一緒にボールペンコーナーを見ていた。
その離れのスポーツ雑誌コーナーにいた國神はふと、近くにいたもう1人の女子マネに聞く。
「なあ、さっき逸崎と何話してたんだ?」
「逸崎さんと?」
女子マネは開いていた雑誌を閉じて置き、耳を傾ける。
「さっきの店で、何かレクチャーしているように見えたが」
まるで商品を説明する店員みたいな姿だった。
「ああ。さっきね、テーピングとか救護道具の種類とか色々教えてくれたの。逸崎さんめっちゃ詳しくてビックリだったわ」
メーカーごとによる商品の特徴や性能を事細かく教えてくれて、側で聞き耳を立てていたスポーツショップの店員の顔がポカンとしていたらしい。
「「スポーツやってたの?」って聞いたら、
・・・
色々と齧った程度にやっていたって。「運動できるなんてかっこいいね」って返したら、「そ、そんなことないよ」って、ツンデレ?みたいな感じで返してきて、何かウケるわ」
(……やっぱ、サッカーやってたことは、あまり知られたくねえんだな)
濁して言ったということは、そういうことだ。
國神は何か落ち込んだような気分になっていると、女子マネがさらに話を加える。
「あ、あと、小さい頃からスポーツやってたのは、お父さんとお兄さんの影響だって言ってたね」
「!」
兄貴だと…?