第1章 ヒーローみたいですね
「!」
河川敷の歩道を上がると、そこにはすでに先客がいた。
自分と同い年くらいの男子高校生達が、試合をしていた。
というか、見たことある練習着だと思ったら、同じ正堂学院高校のサッカー部の奴らだった。
(何だよ。やるんだったら俺も誘えよ……)
國神は声をかけられなかったことに、ちょっとばかし凹んだ。
河川敷を降りて、グラウンド外で観戦する人達の中に紛れ込む。
相手チームの面子はよく見てみると、見たことある顔ぶれだった。
恐らく、練習試合で何度かやったことがある近隣の高校ってところだ。
人数は5対5で45分程度の小さな試合だ。
ディフェンスの掛け声。ボールを蹴る力強い衝撃音。熱い試合に漂う緊張感。
スコアボードを覗くと、4-4で引き分け。
自分の高校のチームは國神の存在にまだ気付いておらず、サッカーに夢中でいた。
(まあ、別に気付いて欲しいっつーわけでもねえし、集中してる奴らの邪魔に…………ん?)
國神は自分の高校のチームに違和感を覚えた。
5人の内の1人、明らかに知らない奴が交ざっている。
特徴は、黒いネックウォーマーをつけている。
(あんな奴、後輩でもうちにいたか?)
それに、男子にしては小柄で不自然だ。
でも、他の選手の引けを取らないくらい、素早い速さでフィールドを駆けて、ボールを保持している相手をブロックする。
「ッ!舐めんなよッ!!」
相手選手は抜こうと右サイドへ駆けるが、"ソイツ"は一枚上手で、ボールを奪い返した。
「なッ!?」
遠目から見ていた國神も、そのテクニックに目を見張っていた。
相手がボールを右サイドに誘導する足の動きを、明らかに読んだ上での奪い方。
相手を追いかけたりして、無駄に体力を使うことなく、最小限の動きにとどめて、自分の成すべきプレイを理解している。
そんな感じの冷静な戦い方だ。
國神は改めてフィールドで奮戦する"ソイツ"を見直す。
(……女子だよなアイツ?誰なんだ?)