第1章 A
言われるまま、その場で靴と靴下を脱ぐ俺の前に、ゴミ袋と濡らした雑巾が差し出された。
「それ捨てたら、足拭いてこっち来い」
「は、はあ…」
確かに汚ねぇっちゃ汚い…よ?
でもさ、「捨てろ」は無くないか?
まだ履けるのに…
名残り惜しいわけでもないけど、渋々ゴミ袋に靴と靴下を突っ込み、雑巾で足の裏を軽く拭く。
それから漸く玄関から廊下へと足を踏み入れた俺は、翔の後に着いて風呂場へと足を踏み入れた。
「広っ…」
銭湯…とまではいかないけど、実家の風呂よりも広い脱衣所に圧倒される。
「つべこべ言ってないで良いから、さっさとそのくたびれた服脱いで、この袋に入れな」
開けっ放しのドアにもたれかかり、やたらとキラキラした腕時計とブレスレットを嵌めた腕を組んだ翔が、まるで俺を見下ろすかのように言う。
つかさぁ、靴や靴下もそうだけど、このシャツだって今の俺にとっては、それなりに必要なモンなんだけど。
それを簡単に捨てろとかさ、なんなの?
と、思いつつも、やっぱり渋々脱いだシャツを袋に突っ込み、ついでに穿いてたジーパンも、それから下着も…
全部一纏に袋に突っ込んだ。
で、文字通り〝マッパ〟になった俺は、舐め回すように俺の身体を見つめる視線に気付いた。