第18章 術式
乱れた息はしばらくすれば通常の状態に戻り、私は疲労しきっている身体を起こした。
「あれ、もう帰るの?」
「この後野薔薇の買い物に付き合うんだよ」
「本当に買い物好きだね、野薔薇は」
私はついこの間買い物をしたばかりだから、欲しいものはないけど。
………ちらりと、今自分が着ているTシャツに目を下ろす。
稽古着というか部屋着というか。
お気に入りのこのTシャツは汗で色が変わっていて、それはどうでもいいんだけど、ただ野薔薇の言った一言が頭をよぎった。
「あのさ、私のTシャツってダサい?」
五条悟に向き直り、今着ているTシャツを男に見せつける様に伸ばす。
急に何を言い出すのかと言いたそうな表情をしたのは一瞬だけ。
五条悟はまじまじと私のTシャツに目を向けると、一度だけ大きく頷いた。
「ダサい」
「………………」
「なにあからさまに傷ついた顔してるの。ダサいのわかってて着てたんじゃないの?」
「どこの世界にダサいってわかってて服買う奴いんだよ……」
「あえてって場合もあるでしょう。……え、まじでそれかわいいって思って買ったの?ファッションセンス皆無すぎない?」
私は膝から崩れ落ちた。
可愛いって思って買ってましたよ、このTシャツ。