第16章 野球
「じゃなくて!!東堂、大丈夫か⁉」
虎杖の腕の中で鼻血を出して死んだ顔をしている東堂。
私は救急箱を片手に東堂の元へと走った。
その時、私の耳に聞こえたその声に、戦慄が走った。
「ナイスピッチ―」「ナイッピー」「ナイッピー」「ワンッ」「ナイッピー」「真希さんナイッピー」「ナイスピッチ―」「しゃけー」「ナイッピー」「ヤンピー」「ナイスピッチー」「オッパッピー」「ナイッピー」
敵からも味方からも教え子である庵歌姫でさえも。
この状況に、禪院真希の投球に、ナイスピッチングと褒め称える。
な、なんだこれは……。
みんなが悪魔に見える。
というか、東堂……オマエ……。
「「ムチャクチャ嫌われてるな……」」
私は心の中で涙を流しながら、腫れた頬にガーゼを貼った。
鼻血は……自分でどうにかしてほしい。
流石に他人の鼻にティッシュは詰めれない。
暫くすれば東堂は復活し、試合は再開。
わざと投げたデッドボールですら東堂は何も気にしていないようで、むしろ笑ってた。
「俺達はプロではない。だからミットから大きくそれることもある」とかなんとか言って。
メンタルが強すぎる。