第11章 試行
女が私を殺そうとした理由が復讐であること。
女から感じた虚無感が私の中に芽生えたこと。
復讐は何も生みはしないこと。
どこまでも私は恨みの対象だと言う事。
私が五条悟を殺そうとするのは復讐と言う名の八つ当たりに過ぎないこと。
全て、五条悟に言った。
言う必要性も無いのに。
止まらなかった。
「私はさ、耐えたほうがよかったのかな。全部の恨みを受け止めて抱えて、ひっそりと過ごしたほうがよかったのかな。そうしたらさ、いつかはそういう負の感情が消えて私は誰からも恨みも憎しみも何も買うことなく静かに過ごせたのかな」
ぽつりぽつりと紡ぎだされる言葉たち。
五条悟は静かにただ、耳を傾けるだけ。
再び、静寂が二人を包んだ。
答えのない疑問を私はずっと一生背負っていくんだろう。
いや、私だけじゃない。
みんなそうか。
そう、なんだよな。
「その答えは僕を殺した時にわかるんじゃない?」
「………」
「僕はね、君の復讐に関してはどうも思っていない。というか、誰が何を言おうと君は僕を殺すのをやめないだろ。だったら何を思っても何を感じても君の好きにしたらいい。復讐したいならすればいいし、したくないならやめればいい。ただ、君が間違った方向に行こうとしているなら僕は全力で止める」
溢れそうになる涙をぐっとこらえた。
肯定も否定もしないその優しさは、ずるいと思う。
復讐が間違っているって言えばいいのに、それを言わない当たり、本当にズルい。