第10章 人形
西崎美優の家は、学校から15分くらいの場所にあった。
どこにでもありそうな普通の一軒家。
私は場所を覚え、車に乗り込む。
時刻は4時過ぎ。
普通の学生なら部活か帰宅か遊びに出かけるか。
このどれかだが、最後の遊びに行く選択肢は極めて低いと補助監督である、伊藤さんに言われた。
「なんでですか」
「この地域から遊びにいくためには電車かバス、車が必要なんです。しかし、この時間はバスはないですし、電車も10時には終電。となればここら辺の中学生は学校帰りに街に出て遊びに行くなんてことはしません」
「…………へぇ」
そんなことある?
終電10時って……。
遊びに行くだけでもここの子達は大変なんだな。
なんて、少しばかりかわいそうに思ってしまったが今はそれが助かった。
「なので、もし彼らが遊ぶとしたら公園です」
「公園……」
「はい、結構敷地が広く、遊具も豊富なので子供たちの遊び場にはうってつけなんです」
そう言って伊藤さんはその公園まで向かってくれた。