第9章 領域
その時、五条悟と富士山野郎の間に何かが飛んできた。
太い木の枝の上に花が咲いているソレは、地面に刺さると同時に私たちの周囲に花畑を展開させた。
まっさらな地面に色とりどりの綺麗なお花畑が咲き誇り、私も虎杖もあの五条悟でさえも戦意を削がれた。
一瞬の隙で十分だった。
虎杖は生えた木の枝に足を取られ、首だけ富士山野郎は何者かに連れ去られた。
「先生、俺は大丈夫!!ソイツ追って!!ゴメン嘘!!ヘルプ!!」
掌返しが早い虎杖。
助けてやりたいのは山々だけど、私今、鍵持ってない!!
虎杖のSOSを聞いた五条悟は早急に虎杖の足を掴むそれに呪力を当てた。
どしゃりと地面に背中から落ちる虎杖に私は駆け寄り、声をかける。
「大丈夫か?」
「うん、平気……」
天を仰ぐ虎杖は乾いた笑みを浮かべた。
私も五条悟も後を追いかける事はしなかった。
いや、できなかった。
逃げるのは異様に早い。
まぁ、私が追いかけたところで鍵持ってないから意味ないんだけど。
「このレベルの呪霊が徒党を組んでるのか。楽しくなってきたねぇ」
「どこがだよ。やべえだろ、どう見ても」
「悠仁と……っていうか皆にはアレに勝てる位強くなってほしいんだよね」
「アレにかぁ!!」
「まじかよ」
一級術師でも手古摺るレベルじゃないか。
目標は具体的な方がいいと言うが、大きすぎる目標は逆効果なんじゃないのかと思ってしまう。
が、そんな生易しい世界ではないから大きすぎる目標を持たなくてはいけないのだろう。