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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第5章 特級







心臓の音が耳に直接響く。
深く息を吐いて、私は地面に鍵を差し込んだ。

「"開錠"!!」

コンクリートがひび割れ特級に向かって亀裂が入り、崩れる。
その隙に虎杖の襟首をつかみ、距離を取る。
これで傷一つついたなどとは思っていない。
だけど、距離を取らなければ今は危険だ。

「夏油、なんで……」
「うるさい!!お前はここにいろ。いいな」

虎杖をできるだけ安全な場所まで連れて行こうとした。
が、それよりも早く特級が私たちに攻撃を仕掛けてきた。
呪力のみの攻撃だと言うのに、パワーが桁違いすぎる。
私も虎杖も壁まで吹き飛ばされた。

「あ"っ……ぐ……っ」

背中に衝撃を受けながら、虎杖を見れば虎杖もまた痛みに顔を歪ませていた。
頭から流れる血を私は拭った。

「虎杖、死ぬなよ」

友達だから。
こんなところで死んでいい人間じゃないから。

私は息を吸った。
ちゃんとできたことは一度もない。
だけど今やらなければ、みんな死ぬ。

私は手の平を合わせ指を組んだ。

「領域展開……」

その時、玉犬の遠吠えが耳に届いた。
これは、伏黒の合図……。

背中が凍った。
後ろから感じるプレッシャーに私はまたしても動けなくなる。

『つくづく忌々しい小僧だ』

ゆっくり振り返れば顔に文様が浮き出た虎杖がそこに立っていた。
宿儺と代わったのか。
どうする。
特級2人相手に私1人で勝てる訳もない。

この最悪な状況をどう切り抜けようか考えるが、打開策なんて見つかるはずもない。
そんな風に思っていると、先に仕掛けていたのは特級だった。
こいつもまた宿儺の力に怯えてるのか、私にではなく宿儺へと攻撃を仕掛けた。

『馬鹿が』

特級の攻撃を片手で弾く宿儺。
なくなった虎杖の左手を再生し、そして特級に反撃を開始した。
私は、その隙に"逃げた"。

息を切らして、もつれる足をなんとか動かして。
自分の気持ちを優先してしまった。
友達の命よりも自分の命を天秤にかけた。
頬に冷たい何かが伝う。

宿儺だ。
あれは虎杖じゃない。
だから、だから……。

言いわけを自分に言い聞かせながら。


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