第13章 人魚姫
「人魚姫ってあの人魚姫かぁ?」
タケル「うん!」
「たしか惚れた男に逢う為に、人間なろうとして声を引換えに足を手に入れたが、結局泡になっちまう話しだろ?」
タケル「実はね、このお話には続きがあるんだよ?」
「そーなのか?」
所詮ただのお伽話。
でも、この時何故か俺は話の続きが気になった。
タケル「気になる?」
「勿体ぶらずさっさと教えろよ!」
タケル「はい、この本貸してあげる!また今度感想聞かせて!」
差し出された本を受け取る。
タケル「そろそろ時間でしょ?ありがとう、楽しかったよ!」
「おお、また来るな。」
タケル「うん、待ってる!」
いつもならあと少し遊ぼうと云い、なかなか帰らせてくれないが今日はやけに聞き分けが善かった。
少し不審に思ったが、いつもとなんら変わらないタケル。
彼奴も大人に近づいたってことか?
そんな呑気なことを考え乍ら、俺は施設を後にした。
車に乗り込んだと同時に助手席側の扉が開いた。
こんな事をしてくる人間はただ1人だ、、、
「ッ何の用だ、糞太宰。」
太宰「やぁ、中也。なんとか小説から出てこれたようだね?」
「お陰様でなぁ!?」
太宰「一生出てこなくても善かったのにー」
「なんか云ったかごらぁ」
太宰「はいはい、落ち着いて」
「手前のせいだろぉが!」
太宰「ねぇ、中也。君、何か大切なこと忘れてなぁい?」
「ぁあ?どーいうことだぁ?」
太宰「本当は気付いているんじゃないかい?」
太宰の云う通りだ。
あの日、あの病院以来、俺の中で何かが消えていることに気付いていた。
だが、それを思い出そうにも思い出せないのだ。
「何が云いてぇんだ」
太宰「答えを知りたいならその本を読んだらいいさ。」
太宰が指を指す本
それは、タケルから借りた本だった。
太宰「君の探しモノが見つかるかもよ」
どうせ何かの悪戯だろう。
普段ならそう思う、、、。
然し、今日は違う気がした。
俺の探しているモノが見つかりそうだった。
俺は本を開いた。