第39章 番外編Ⅲ エゴイスト日和 ✢
───双眼鏡を持ってきて良かった。
どんな廻も、見逃したくなかったから。
でもそのせいで、私は苦しむことにもなった。
目の前で繰り広げられる光景が眩しすぎて……
とびきり楽しそうにサッカーするあなたを見られたのが嬉しすぎて……
それがあまりに、尊すぎて。
心臓が、張り裂けそうだったから───。
「何やってんの廻!!ゴール狙えもっとぉ!!それでもストライカーか!?」
隣で立ち上がった優さんの大声で、ポワーンとお花が咲いていた頭がはっとする。
ブルーロックメインスタジアムは、超満員の熱気に包まれていた。
千葉県大会の競技場とは比にならない大規模な会場で…スポーツ観戦すること自体が初めてなのに…。
双眼鏡越しに観た三ヶ月ぶりの恋人の姿は……
私には刺激が強すぎた。
「えー!同じチーム!ウチの子、8番です!」
「えー凄ぉい!」
「よろしく!よろしく!」
「ありがとうございます!ウチの子とサッカーしてくれて!」
ハーフタイム、前列のご夫婦と打ち解ける優さん。
試合に出るわけでもないくせに緊張していた私は、そんないつでも明るい彼女にほぐされる。
「で、この子が息子の彼女ちゃんです!」
「! 優さんっ…!」
「あら♡可愛い彼女さん!世っちゃんにもそろそろ、そういう子できないかしらねぇ。」
「世一はこれからだよ!いいね!彼氏くんがあんなにスゴいサッカー選手なんて、最高でしょ?」
「あはは…はいっ!ありがとうございます!」