第36章 蜂蜜の愛
「廻はさ、JFUの合宿に参加して……最終的にどうなりたい?」
冷えていた爪先がじんわり温かくなる。
始まりそうな雰囲気になったところで、蜂楽は一旦止めて私を見た。
「とりま合宿で、楽しくサッカーしたいな。
俺を理解ってくれる“ともだち”見つけて“かいぶつ”とやるみたいに楽しく遊ぶんだ。そんで……
スーパースペシャルなサッカー選手になる♪」
蜂楽の眼は太陽みたいにキラキラ輝いていた。
彼らしい拙い言葉の丸い声が、耳に心地良い。
「それって……例えばW杯にも出たいってこと?」
「うん!もっちろん♪」
“夢ちゃんは俺のサッカー人生に、絶対絶対必要だよ?”
このミサンガを作って足首に結んだ日、真剣な眼でこう言ってくれたよね。
私とはスケールが異なる夢を追いかけてるんだって、蜂楽のサッカーを初めて観た時から感じてた。
あなたを遠く感じてしまいそうで、それが怖くて……
ずっとちゃんと、聞けなかったんだ───。
「夢は?どうなりたいの?」
“俺の幸せな人生には、楽しいサッカー!
それと、大好きな夢ちゃん!そんだけ♪”
嘘がつけないあなたの綺麗な心は……
私が誰よりも知ってる。
なら、私も……その夢の隣にいてもいいかな?