第30章 裏切り
「廻…“運動どんくさい”は、余計でしょーがぁ。」
「時間差♪え、マジそれで泣いてんの?」
「……んなわけ、あるかっ……。」
“今日、帰ったらさ。この顔のホンモノ見せてよ。”
───ごめんね、廻。
さっきまで私……笑えると思ってた。
久々のふたりとの時間をとても楽しみにしてたから。
色々経験して私……強くなったと思ってた。
あんなことがあっても、気丈に振る舞う気でいたから。
でもあなたの期待を……結局、裏切っちゃった。
あのクロッキー帳に描いてくれた私みたいに……
笑って“ただいま”って言えなくてごめんね───。
「話したいことが……あるの。」
───“太陽”さん。
どうか私の涙を、その温かさで乾かしてもらえませんか?
「なにか、あったの?」
蜂楽と優さんに、抱えてたこと全てを話した。
“お兄ちゃん”のこと、両親の離婚とその理由。
そして“ストーカー”の真相。
ふたりとも、同じ色の眼を潤ませて聞いてくれた。
“辛かったね”と言って、抱きしめてくれた優さん。
頭を撫でながら髪や頬にキスしてくれた蜂楽。
ふたりは私の“太陽”そのもの。
私の居場所はもう……ココだけなんだと思った。
今日は今季一番の寒さになるって聞いたけど……
“太陽”がふたつある、とても温かい夜だった。