第26章 いけないこと ✢
ただ、それは言い換えれば、試験準備に集中できるいい機会でもあった。
「夢ちゃん、すごく上手くなった!あ、ココはもっと鉛筆立てて濃いめに陰影付けていいよ。」
「わ…印象変わりますね。ありがとうございます!」
優さんに、前よりデッサンを褒められるようになった。
夕ご飯の片付けが終わった後のアトリエで、優さんとイーゼルを並べるのがとにかく楽しかった。
「球技大会の資料は全部この箱。文化祭のはあっちこっち散ってるけど、生徒会室の中には全部あるから。」
「解りました。蜜浦先輩、会長お疲れ様でした。」
生徒会長の仕事は、蝶野くんに無事に引き継げた。
会長業務で余裕がないのか、あれから特に彼からのアクションはなく、内心ホッとしている。
「ほー。あの蜂楽先生の個展のロゴデザインを蜜浦がね。素晴らしいじゃない。」
「殆ど、蜂楽先生のお陰です。」
「面接試験ではそのことを上手くアピールするんだ。データをまとめたものを印刷して準備しておくといい。」
「なるほど!やってみます!」
使えなくなってしまった生徒会室の代わりに、
昼休みに美術の先生に会いに行った。
絵の指導もしてもらった。
第一志望校の願書を、提出した。
知らなかったことを少しずつ知っていって……
心は躍るも、ヒリヒリした。